慢性骨髄性白血病の分子標的薬グリベックが登場して約9年半過ぎました。その効果は我々患者に対し多くの福音をもたらしました。つまり、生存率の大幅アップとQOLの向上です。多くの方が普通の生活を営むことが出来るようになりました。
しかし、その一方生涯服薬の必要があること、重篤な副作用や効果が見られないということで休薬せざるを得ない事も生じてます。その後第2世代の分子標的薬タシグナやスプリセルが上市されました。その結果、グリベックが不耐用や抵抗性の患者さんも救われるようになりました。しかし、依然として一生涯飲み続けなければなりません。そのため、経済的な問題、結婚や妊娠、就労についても多くの問題を抱えながら生活しています。
そこで、薬をストップできないのかという課題がクローズアップされてきました。フランスではSTIM試験(stop
imatinib study)という試験が行われましたが、2年後には約40%の患者さんが再発をしなかったという報告もあります。
ご存じのようにフランスのSTIMでグリベックを飲み続けることで治癒に近い状態になって薬をやめても再発しない患者さんが存在することが確認されました。もちろんこれからも長期の観察が必要なのですが、私たちにとっても中止が夢でないことを示してくれた初の試験です。
ご紹介する2つの臨床試験の略称を「STAT1」と「STAT2」といいます。「STAT1」とはSwitch
to Tasigna Trial のことで「STAT2」とは
Stop Tasigna Trialのことです。これは日本初の大掛かりなTKI-STOP試験です。
まず、MMRかCMRかを正確に調べ、(秋田県の患者さんはほぼこの検査が終わってます)MMRならSTAT1、CMRならSTAT2にのって治療を行うことができます。
治療の基本は一番深い寛解状態のCMRを達成すること(STAT1)、そしてCMRを2年間一度も分子再発することなく継続すること(STAT2)です。それがSTOPの必要条件になります。STAT1でCMRに到達した患者さんはSTAT2への移行ができます。
今回はMMR (3-log reduction)よりも深いCML4.5
(4.5-log reduction)を安定して測定できる検査系が確立できましたので、この前向き試験が可能となりました。私のCMLの患者さんでは20人くらい希望されております。早速7月からSTAT1またはSTAT2を開始予定です。STOPしたい多くの人にこの試験を正確に知っていただき、自己判断でやめることがないようにきちんとしたフォローもさせていただきたいと考えております。
まず明らかにしなければいけないのがSTOP後の再発率とどのような方がSTOPしても再発しないのかということです。STOPする前に分かればとてもいいのです。
6月に秋田大学の倫理委員会は通過いたしまして、これから研究グループの参加施設が続々と倫理委員会を通す予定です。私たちの研究グループは東日本CML研究グループというものです。さらにこの臨床試験では下総血液研究会(千葉県)と三重血液研究会、新潟グリベック研究会との共同研究となります。東京を除き東日本のほぼ全域+三重県が参加施設の範囲ですが、これから施設名を公表していくかは各施設に問い合わせないといけません。倫理委員会を通ったところから公表できることになると思います。試験の参加人数はSTAT1で140人、STAT2で100人を予定しています。
秋田大学では6月末に倫理委員会を通過いたしました。この研究全体の代表者が秋田大学医学部血液腎臓膠原病内科教授の澤田賢一先生で研究事務局が秋田大学医学部講師の高橋直人です。皆さまの正確なご理解とご協力のほどお願い致します。