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血液がんフォーラム(大阪)レポート

フォーラムの概要を簡単にレポートします。内容は受講した内容のメモです。よって参考情報としてお読みください。

1血液と血液がん

1)疾病の基本概念と血液がん治療の現状 

血液のがんは、それぞれの疾患ごとに造血のどの部分でがん化するのか、病気と治療を理解するための基礎学習講座です。「同じ血液がんだが隣の患者さんとは病態も治療も少しずつ違う」ことを知り、自分の疾病を学びます。
赤血球、白血球、血小板などの血球は元をただせば同じ造血幹細胞からできていて、造血幹細胞は自己複製することにより一生涯血液を造っていく。
白血病などの血液疾患が起こる仕組みを御説明いただきました。
同じ白血病でも、原因因子の違いや、患者さんの年代性別などの違いから、同じ病名でも個々の病状は異なってきます。
グリベックやリツキサンの例を挙げてなぜ病気に効くのかの解説をしていただきました。
抗がん剤治療の際、複数の抗がん剤を組み合わせて使う目的は作用機序の異なる抗がん剤を組み合わせより有効な治療を行うためと、副作用の異なる抗がん剤を組み合わせることによって、副作用を分散させるためだそうです。
今後は、ワクチン療法や白血病幹細胞を標的とした治療戦略が確立できれば、治療成績の向上や、患者さんのQOLの向上が見込まれます。

2.血液がんの治療

1)薬物療法の基本理解 
最初に抗がん剤が癌細胞に効く仕組みを御説明いただきました。

抗がん剤は細胞分裂が盛んな細胞に良く効きます。
血液の細胞→血球の減少

消化管の細胞→吐き気
口の中の粘膜の細胞→口内炎
毛髪の細胞→脱毛
抗がん剤は植物や細菌から作られるのに対して、分子標的薬は特定の標的に効くように人工的に作った薬です。
On target効果→標的に効く
ff target効果→標的外に効いてしまう(副作用が生じる)
現在アメリカで承認されているくすりの約2/3が分子標的薬ですが、2015年には3/4以上が分子標的薬になるだろうといわれています。

2−3移植療法の基本理解

 造血幹細胞移植の自己末梢血幹細胞移植 同種末梢血幹細胞移植PBSCT   について説明がありました。移植をするためにはHLAの検査が必要ですが、その基準は変わってきています。
また移植後の合併症GVHD,には急性GVHD,と慢性GVHDがあります。
 
移植年齢は現在では、ミニ移植が拡大しています。

3−1血液病棟のナースから

手指清潔  流水による手洗い、速乾性手指消毒剤が基本です。
うがい、口腔ケアもかかせません。
身体の清潔は主にシャワーの利用で皮膚のケアも大切です。
そのほか食事  生活環境  ペット、園芸、粉塵、インフルエンザ対策にも気を配る必要があります。
 

3−2 外来化学療法

チーム医療で行っています。
阪大病院では安全キャビネットで抗がん剤の調剤をしています。そのほか阪大では抗がん剤の皮下漏出が少ないのが自慢です。 
患者さんにのぞむこと:副作用の自己管理をしてください。また ナースは専門知識があるので遠慮なく相談してください

2−2 治療と鬱(うつ)

がんと心の関係
生命に脅威を与え、今までのような生活が出来ないのではという不安がある時突然降りかかります。
不安と抑うつは全病期の47%が何らかの精神的問題を発症します。不安とは漫然としており対象がはっきりしません。具体的には表現しにくく精神的症状だけではなく、動悸、息苦しさなど身体症状も出ます。抑うつとは普段よりも気持ちが落ち込んだ状態が継続して見られる状態です。精神的エネルギーが全体的に低下しているため思考、集中力、記憶などの面でも影響を及ぼします。
血液がん特有の問題は寛解する病型も多く、治癒を目指して最後まで積極的な治療が行われます。患者も最後まで完治を期待し、治療上生じてくる副作用にも耐えようとする姿勢が強いようです。また
・忍耐強く、抑制的な傾向が見られる ・一部を除いて一般的に根治治療的イメージの強い外科手術は行われない。治療法は化学療法が主体であるため、その様々な副作用に耐え続けなければなりません。小児に多い疾患でもあり、患者のケアと共に家族の支援に特別なケアが必要となります。
生活機能への影響、家族の精神的負担の増加、治療への意欲や取り組みへの影響、否定的な思考(視野が狭くなる)などの悪い循環を解消するための対処が必要となります。
不安、抑うつ、不眠は結びついており、不眠からせん妄へ進まぬよう早めの対応が必要です。
家族は第2の患者となりえます。
不安、抑うつに気づいたら、そのまま放置しておこうと思わないで誰かに話してみること、出来れば専門家に相談することです。精神科や心療内科は怖い場所ではありません。
日常でよくみられる変化に注意する。
morning depression 朝に悪く、夕方から夜に楽になる(日内変動)
 男性であれば朝刊を読まなくなった。朝のニュースを見なくなったなど。女性であれば朝の最低限
 の身繕いをしなくなったなど
・睡眠障害 鬱の
80%以上にみられます
・仮性の認知症状態 記憶力、判断力、集中力、作業能力などの低下が見られます

・その他悲観的な言動、飲酒量の増加なども注意が必要です

抑うつを支えるには?
(家族・介護者が知っておくべき事)
・性格的弱さによるものではないこと
・多くのがん患者が経験するものであること
・がんという現実的な困難が背景に存在しても治療で症状が和らげる事が可能であるこ
・安易に「がんばれ」と言わないこと
・休養が重要であること
・薬の効果が期待できること
・治療には時間が必要であること
誤解の払拭
・不安や抑うつは自身の心が弱いからあるのでしょうか?
------そうではありません。人に相談することによって気持ちが楽になる事が多くあります。
・安定剤や睡眠薬はクセになってしまうのではないでしょうか?
------不安は将来への見通しの不透明さから生じます。治療につき、主治医やスタッフとしっかり話し
  合い、分からなければ質問することが必要です。社会的問題は医療ソーシャルワーカに相談す
  るとよいでしょう。

・スポーツや登山など激しい運動をしてもよいのでしょうか?
------本人が楽しいと感じることは続けてもよいでしょう。
患者の2人に1人は精神的な問題、3人に1人は抑うつ症状を持ちます。一人で悩まず誰かに打ち明けることで和らげる事ができます。相手は誰でもよいです。一番話しやすい人に。心の専門家への扉は常に開いています。

分科会(CML

最初に金倉先生より病気の概要を説明して頂き、その後QAを行いました。
CML
の治療の歴史、治療途上の目標のお話しがありました。もし薬の効果が見られない場合は治療法を変えることがあります。36812ヶ月でそれぞれのレベル目標が達成されるように治療します。56年飲み続けて急性転化しなければ悪化する可能性は非常に低いです。
タシグナやスプリセルをグリベック不耐用の人のみならず初発の患者さんにも投与する試験が行われています。早期に腫瘍細胞を減らしてやると急性転化する可能性が低くなります。副作用の面からもグレード3,4の重い症状は少ないが新しい症状が出ないとも限りません。

以下、いくつかのQ&Aを紹介します。
Q
:末梢血のデータが100コピー前後ですが、骨髄検査をしたほうがいいと聞きましたが?
A
:一般的には末梢血で最低3ヵ月ごとに検査しておけば問題ないと言われている。100コピーだと少
  し残っている状態。増量も考えられます。


Q
2002年よりグリベックを4錠から8錠、20094月よりタシグナを服用。水分はとっても良いと聞いたのですが牛乳やジュースはいけないでしょうか。また白髪が出たのですが。
A
:牛乳やジュースは時間をおいて飲むのであれば問題ないと思います。白髪は人によりますが肺がんのイレッサでもでるようです。チロシンキナーゼ阻害剤なのである程度の影響はあるのではないでしょうか。STIM試験の結果では止めてしまうと6割ぐらいの人が再発しています。どうしたら止められるかも大きな問題です。ずっと飲むというは苦痛でしょうから。

Q2年前より貧血。ヘモグロビンが7.5~7.7。副作用は貧血、浮腫み、心臓の周りに水、筋肉痛ですが普通の生活は送れています。タシグナに変えようかという話がありました。副作用は同じようでしょうか。また、グリベックに戻る事は可能でしょうか?
A:タシグナにすると軽減する傾向があるような印象です。しかしその方が軽減するかどうかは服用してみないと分からないという所です。イマチニブに戻すことは出来ます。副作用が出たものに対しては少量から始めることも可能です。

QH2よりインターフェロンで治療中。グリベックに変更すべきでしょうか?マルクでは少なくなっていると言われているが問題ないでしょうか?
A:インターフェロンで1割から2割の方がPh(フィラデルフィア染色体)が消える方がいます。もし副作用がないのでしたらPhが消えているのであればグリベックに変える必要性はないと思います。

Q:グリベックを6錠服用していましたがスプリセルに変更しました。副作用についてお聞きしたい。
A:よく言われているのは胸水貯留が出ると言われています。しかし、日本ではそれほど起こらない方もおられるし、それもケースバイケースだと思います。長期にわたる副作用は分からないですが。こむら返りの対処法では漢方を使用する人もいます。暖めたり、温湿布をすることも良と思います。クーラーなどで冷やすとよくありません。

Q:タシグナ12錠を服用しています。セカンドオピニオンを聞くには何が必要なのでしょうか。
 タシグナが
3ヵ月処方から2ヶ月処方に戻ってしまいました。
A:医療費の問題があって、抗がん剤は基本的には書面上は2ヶ月くらいまでは許されています。日本の国で違いがあるのは保険の審査官が認めるか認めないか。大都会はだいたいOK、なぜなら血液の医師がちゃんと見ているから。しかし、ある所では3ヵ月処方をしない所もあるのは事実です。
セカンドオピニオンは絶対
OKです。医師によって意見が異なる事は多少あるかも知れません。新しい薬剤を使用する時は意見が分かれる事があるかもしれません。

Q
:高額医療費が委任払いにならないか。
A:一般的に通院に関しては委任払いになりません。
 (しかし、会場に委任払いでやっている患者さんが
1名おられました。その方は市と1年くらい交渉
  して実現したそうです)

Q:男性の場合、子供をつくるのに問題ないか?
A: 
3ヵ月休めば薬の影響を少なくする事が出来るとも言われています。グリベックを飲む前に凍結保存することが一番安全ではないでしょうか。

Q
:ここ2ヶ月くらい浮腫みが出て困っている?何か良い方法は?
A:浮腫みは初期には出るが、だんだん軽減していくというのが一般的ですが、微妙な問題なので他に腎臓や、心臓などの余病がないか調べてもらう事も必要です。一番簡単なのは利尿剤ですがよく主治医と相談して処方する事です。

最後に金倉先生に感謝の拍手で会を終えました。(村上、篠原、田村記)

以上

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